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Aを意識したSOPの記録

薬歴の「A」の内容を充実させていくためには、「Aに記録しておきたいこと」で紹介した内容を意識して「S」「O」の情報収集を行なうことが大切です。そして、その「A」に基づいた服薬指導=「P」を行ない、それぞれの内容を記録していきましょう。

●Problem情報(S・O) → 考察(A) → 計画(P)

薬歴の記録の際は、 「S→O→A→P」 の順で書くことが多いのですが、実際の調剤・処方監査・服薬指導の手順は、S→O→A→Pの順番通りに行なうことはできません。
この実際の業務順序と薬歴記録の順序の違いこそが、「薬歴は難しい」と感じる一因です。

それぞれのポイントで「A」を意識しておくと、S+O→A→Pをつなげやすくなります。

第2回「SOAPの役割分担」で紹介した通り、SOAP形式は「患者さんのProblem(問題・課題・悩み)を解決するため」の薬歴記入方法です。つまり「Problemを見極め、そのProblemを解決するための薬学的判断」=Assessment(A)がSOAPの中心となります。

下図に示す通り、Problemの分析・考察(A)につながる情報収集(S・O)を行ない、その解決方法を示す(A→P)ことがSOAP薬歴の充実につながります。

Aを中心とした薬歴チャート
Aを中心とした薬歴チャート

薬歴の表紙や、「9項目のチェックの仕方」で紹介した「9項目」もProblem考察・解決のための重要な情報となります。有効に活用しましょう。

Pには3つの役割がある

Pは、Plan(計画)を記録する項目です。
S・Oの情報、Aの考察を踏まえ、どんな服薬指導や調剤行為を行なったのかを記録します。今回はPの3つの役割について再確認します。

●Pの3つの役割
1)Ep;Educational Plan=情報提供・指導したこと

  • 薬効、副作用、相互作用などの説明
  • 服用方法や飲み忘れた場合の対処法などの説明
  • 使用・保管にあたっての注意事項
  • 患者の質問・疑問に対する回答
  • 服薬方法、誤飲防止等の服薬指導 ※乳幼児加算の場合必須

2)Cp;Care Plan = 患者に対して行なったこと
※OやAなどに記載しても構わない内容もあります

  • 疑義照会の内容
  • 一包化や自家製剤、計量混合調剤などの調剤行為
  • 調剤・投薬時の工夫
    • 3兄弟のため分包=青のライン
    • 吸入カセット3本中1本セットしてお渡し など
  •  服薬指導につながる内容
    • 低血糖時の注意リーフレットとブドウ糖(10g☓4袋)をお渡し
    • 食品食塩換算表で食塩摂取の目安を説明 など

3)Op;Observational Plan = 申し送り・次回の課題

  • 次回聞き取りを行ないたい内容
  • 体調変化や、副作用状況の変化、効果が得られているか、など
  • アドヒアランスの確認、残薬の確認
  • 検査結果の聞き取り
  • 併用薬や嗜好品などの詳細が不明である場合
  • PPIなど投与日数に制限のある医薬品の確認

●1つの「P」の枠内でまとめて記録するか、「Ep」「Cp」「Op」を別項目として記録するか、疑義照会や一包化・自家製剤の内容をOやAに記載するか、などは、各薬局や管理薬剤師のルールがあるかと思います。どの薬歴の書き方が正しいか、ではなく、より充実した薬歴の記載につなげるための再確認としてください。

●Pの記録は次回の調剤・投薬・指導への「連続性」を担う項目と言えます。どんな指導が行なわれて、何が課題になっているのか、次回の読み手に伝わるような記録を心がけましょう。

Oに記録しておきたいこと ~SとOの違い~

Oは「客観的な内容」を記録する項目です。
POS薬歴において、「主観的」「客観的」とは、患者さんの視点が基になります。つまり、患者さん側からの視点は「S」、薬剤師側からの視点が「O」に記録する内容になります。
今回はOに記録しておきたいことや、SとOの違いなどをご紹介します。

●Oに記録する内容

①来局者、来局期間
・来局者;本人、家族、介護者(ヘルパー)など
・処方日数と来局期間のズレなど;約3ヶ月ぶりの来局(前回14日処方に対して)など

②処方内容の変更点
電子薬歴で、処方内容が自動的に挿入される場合には必ずしも必要ありませんが、特に症状変化を表している処方内容変更は記入しておくと分かりやすくなります。

③患者の特徴・症状
・患者の特徴;車いす、松葉杖、目が不自由、筆談で会話、片言の日本語、など
・体重(特に乳幼児の場合)
・外観的症状;左足を引きずっている、血色悪い、左上腕部に丘疹状紅斑あり、など
・来局時の様子;急いでいる様子、症状あまり話したがらない、など

④投薬時に行なったこと(※内容に応じて、AやPへ記録しても良い)
・加算算定の根拠となる行為
→“飲み忘れ防止のため医師指示により一包化実施”、“医師指示により○○錠を粉砕し、自家製剤加算算定”など
・投薬にまつわる行為
→“抗インフルエンザ薬吸入、カウンターで吸入する”、“点鼻薬空打ちしてからお渡し”など
・配布したものなど
→“シロップ剤に、スポイト1個添付”、“血圧手帳お渡し”、“ブドウ糖3袋提供”など

⑤併用薬検査値などの臨床データ
・お薬手帳や薬情・持参した薬などから読み取った併用薬
・血液検査や健康診断の結果・血圧手帳などから読み取った臨床データ

 

●「S」と「O」の使い分け

  • [S]…「今日は血圧125/70だった」など、患者さんの自己申告はSに記録します。
  • [O]…検査結果表やお薬手帳など記録値などが確認できる場合はOに記録し「HbA1c:7.3%(NGSP)(H26.8検査記録より)」と、引用元も記録しておくとよいでしょう。

※患者の訴え(S:コレステロールが高い)と、検査値(O:LDLは基準値範囲内だが、中性脂肪が高い)が異なる場合は、病識の有無など、Aに考察を記録する材料になります

 


Sの記録のポイント

S=会話をそのまま書く、と覚えている方が多いと思います。
しかし、本当に「そのまま」書いてしまうと、記録としてかえって伝わりにくくなることがあります。
次のような患者さんとの会話を、薬歴にまとめることを考えてみます。

薬「今日は薬が1種類減ってますね。」

患「あぁ、あの緑色の薬は飲みにくいから、もう飲みたくない、って言ったんですよ。」

薬「ガスターDですよね?飲みにくいというのは、どうしてですか?」

患「味が苦手なんですよ。ホントは飲んでると、胃の調子がいいから続けたいんですけど。」

薬「口腔内崩壊錠の味が苦手なんですね。では、口ので溶けない錠剤でご用意することもできますが、先生に確認してみますか?」

患「味がしない錠剤があるなら続けたいですね。胃の調子を気にしながら食事をするのはつらいです。おいしい食事をするのが趣味なんですよ。来週、北海道へ旅行に行くんです。友達と札幌のスープカレー屋さんめぐりをする計画を立ててるんですよ。」

この会話を「そのまま」Sに記録すると次のようになります。

緑色の薬は飲みにくいから、もう飲みたくないと先生に伝えた。味が苦手。
本当は薬を飲んでいると胃の調子がいいから続けたい。味がしない錠剤があるなら続けたい。
胃の調子を気にしながら食事をするのはつらい。おいしい食事をするのが趣味。来週、北海道へ旅行に行く。友達と札幌のスープカレー屋さんめぐりをする計画を立てている。

このように会話「そのまま」の文では、読みにくいと感じるのではないでしょうか?

患者さんの「Problem」や、「A」につながる部分にスポットを当て、メリハリをつけて記録することが、読みやすく、かつ、内容のある薬歴につながるポイントになります。

緑色の薬(ガスターDのこと)(☆1)は、飲みにくいのでもう飲みたくない、と先生に伝えた。味が苦手なだけで、薬を飲んでいると胃の調子がいいので、味がしない錠剤があるなら続けたい。(☆2)
おいしい食事が趣味。来週、北海道へ旅行(札幌・スープカレー屋めぐり)を予定している。(☆3)

☆Point1 薬の名前や病名が思い出せないことは、病識や薬識の目安になるので、患者さんの言葉そのままを記録する方が良い。固有名詞などをカッコで補うと伝わりやすい。
☆Point2 副作用や体調変化、アドヒアランスの情報などは、しっかり記録をしていく。
☆Point3 世間話などProblemに直接関係のない話は、簡潔にまとめるなどの工夫を。

多くの情報を記録することも大切ですが、そのために重要な話が伝わりにくくなったり、言葉を並べただけで内容の薄い記録になったりしないように気をつけましょう。

Aに記録しておきたいこと ~指導の際に考えたことは?~

「SOAPの役割分担」の通り、Aは「薬剤師としての『判断・評価』」を記録する重要な薬歴項目です。

Aの内容を充実させていくためには、「Aに記録しておきたいこと」を意識してS・Oの情報収集をしながら服薬指導を行なうことが大切です。Aの記録がスムーズに行なえるようになります。

今回は「Aに記録しておきたいこと」をご紹介します。

 

●処方内容の判断・評価

①用法・用量・適応症の確認

特に散剤やシロップ剤など体重-用量換算が必要な薬剤や、年齢・適応症によって用量・用法の異なる薬剤については、適切であれば「用量・用法OK」、相違や疑問点があれば「用法違いのため疑義照会、処方変更なし」などの記録を残しておきましょう。

 

②合併症・併用薬の確認

新規の患者さんや新処方薬の場合はもちろん、継続処方の薬剤でも合併症や併用薬は定期的(半年~1年程度)に見直しを行ない、「緑内障治療中だが、眼科医から正常眼圧であり服用継続支障ない、との指導あり」など、その評価を記録しましょう。

また、薬剤追加や同時処方による疾病禁忌・適応外は見逃しやすいので注意が必要です。

例)ゾルピデム(先発品:マイスリー)服用中に抗精神病薬が追加(統合失調症に伴う不眠症は適応外)

抗精神病薬服用中にゾルピデム追加だと発見しやすいが、逆のパターンは見逃しやすい

疑義照会の経緯や、対応(中止・変薬・継続など)についても記録しましょう。

 

③食品・嗜好品・体質・ライフスタイルの確認

②同様に、新規患者さんに限らず定期的(半年~1年程度)に見直しを行ない、「毎晩飲酒あり、睡眠薬への影響について理解低い」「テオフィリン:禁煙継続を確認」「授乳継続中のため、引き続き服用注意」など、その判断を記録しましょう。

 

●副作用の確認・服用状況など

①重大な副作用や体調変化の確認

イエローレター・ブルーレター・警告に記載のある副作用、重大な副作用として記載のある副作用については定期的(1年に1回以上)に確認を行ない、その判断を記録しましょう。また、副作用が起きている場合には「SE頭痛あるが、軽微なため処方継続」「SEと思われる便秘継続→腹痛なし、Dr.へ未相談」など、評価を記録しましょう

②服用状況や治療効果の確認

「夜勤あり睡眠・食事不規則で、朝食後分残薬あり→用法変更を医師に提案必要か?」「一包化でComp改善が必要と思われる」「アレグラで皮膚かゆみが落ち着いてる様子」など、残薬・服用状況・治療効果についての考察を記録しておきましょう。

 

「問題がないから記録しない」ではなく、「問題がないいう確認・判断をしたという記録が大切です。

SOAPの役割分担

多くの薬局では、POSに基づいたSOAP形式で薬歴記載を行なっていると思います。今回は、S・O・A・Pのそれぞれの役割を再確認していきます。

 

●SOAP薬歴の基になるPOSとは?

SOAP形式の薬歴は、POS(問題指向型システム)という考え方が基になっています。POSとは、「問題指向型」という言葉が示している通り、患者さんの立場に立って患者さんのProblemを解決するための考え方です。 従って、患者さんのProblem(疾患の治療・副作用ケア・相互作用・アドヒアランスの改善など様々です)を見出し、その情報を記録・共有するための方法がSOAP薬歴になります。 各々の患者さんのProblem情報を共有していくことを意識して、SOAP薬歴の記録に取り組んでいきましょう。 

 

●S 主観的な情報 (Subjective Data)

Sには主観的な情報、つまり、患者さんから聞き取りをした内容を記録します。 患者さんが、症状や服薬状況、副作用についてどう感じているか、どんな悩み・疑問を持っているかといった、Problemに対しての患者さん自身の言葉を記録していく項目です。

 

●O 客観的な情報 (Objective Data)

Oには客観的なProblem情報を記録します。 「冷却シートをおでこに貼っている」「咳こみがひどい」「右足を引きずっている」などの患者さんの見た目の情報や、検査結果数値を書き写した場合(例:BP…135/78、肝機能検査…GOT 48IU/L、GPT62IU/Lなど)も、こちらに記録するとAやPが整理しやすくなります。

 

●A 判断・評価 (Assessment)

Aには処方内容・処方履歴とS・Oの情報を基に、患者さんのProblemに対しての判断・評価を記録します。併用禁忌薬や疾病禁忌を確認したか?や、飲酒や車の運転の有無を確認したか?重大な副作用の発現はないか?などの薬学的な判断も記録しておきましょう。

 

●P 計画・行動 (Plan)

PにはProblemを解決するための計画・行動を記録します。 Pは、患者さんへの説明(Ep) ・次回確認事項(Op) ・一包化や疑義照会などの改善計画(Cp)など細かく分けて記録する場合もあります。